太陽*3の小説「野望戦隊ラムズマン2」

ぷにその13「審査に合格しちゃった日」3/3 2008/10/20 20:46

太陽*3さん (27) の投稿
太陽*3さん
 本戦に残ったのは結局十一名。その中に、めでたくゆかりとこなみととこたんの名前があった。とこたんは最高点で受かり、こなみちゃんは八位、ゆかりは九位だった。この点は最終選考の時には全く関係が無いから、という係の人の説明だった。
 本戦は二週間後。今日、合格者に与えられた課題をこなさなければならない。その内容は課題曲、自由曲、お芝居の一シーンの台本を覚える、等だった。
「良かったぁ・・・・」
 合格の喜びをかみしめるこなみ。本当に、本当に嬉しそうな、キラキラした笑顔だった。ゆかりたちは受取った課題を鞄に入れ、会場の出入り口から外に出た。
(夕焼けが綺麗・・・・)
「こなみ」
 会場前の噴水の近くに、女の人が立っていた。
「お姉ちゃん・・・・」
「やっぱり、ここだったのね」
 こなみのお姉さん、ミサさんがこなみの前まで歩いて来た。
(どうしてミサちゃんがここに? あ、ちなみにミサちゃんは本当のゆかりの年齢より下だからね)
「お姉ちゃん・・・・どうして?」
「この前のこなみ宛に来た郵便に、今日ここで二次審査って書いてたから。私たちには『もう受けない』って言ってたのに、休みは公園に出掛けたり、夜は小さい音でダンスの曲とか聞いてたでしょ? だから絶対に諦めてないんだって思ったの。安心して、お父さんやお母さんには言ってないから」
「お姉ちゃん、これは・・・・」
「あ、あたしが受けようって言ったんです! 一人じゃ淋しいから、一緒に来て欲しいって、それで、だから・・・・」
「ありがとう、ゆかりん」
 ミサちゃんはゆかりの頭にポンと手を置いた。そして、こなみの前にしゃがんで、彼女と目線を一緒の高さにした。
「二次予選、通過したの?」
 コクン、と頷くこなみ。さっきまでの笑顔とは対照的な、泣きそうな表情だった。内緒でオーディションを受けに来たから、お姉さんはこなみちゃんを怒る気なのかな、とゆかりはハラハラしていた。
「こなみ、あなたがやりたいことも分かるの。でも、お父さんやお母さんの心配も分かってあげて。こなみは私たちにとってはまだ子供なの。可愛いの。あなたに仕事をさせたり、知らない大人たちに預けたりしたくないの。分かるでしょ?」
 俯いたまま黙ってるこなみ。
「あの、こなみちゃん、受かったんです! だから、せめて最後まで受けさせてあげて下さい!」
「今だからやめられるのよ、ゆかりん。もし優勝なんてしちゃったら、もう戻れないのよ。だから私は今日ここに来たの」
 厳しいミサちゃんの視線が、ゆかりに次の言葉を出させなくした。厳しいけど、どこか悲しく、そして優しい感じがした。
「万が一優勝しても、万が一アイドルになっても、それで成功ってわけじゃないの。生き残るのはわずかな人だけ。そんな争いの場にこなみを行かせたくない。学校に行って、普通に仕事をして、普通に幸せになって欲しいの」
 ふるふると首を振るこなみ。振った目から涙が飛んだ。それを見たゆかりはミサちゃんに思わず突っかかってしまった。
「そんなの、大人の勝手だよ! あたしたちには夢があるのに、どうして成功しないって言えるの? 失敗するって決め付けるの? 普通って何なの? つまんないよ、普通なんてつまらないよ! 確かに心配だろうけど、失敗がなくて、冒険もない人生をこなみちゃんに送らせたいの? そんなの大人の事情じゃない! こなみちゃんはそういうのに合わせて生きて行くの? 自分の夢は諦めろって言うの!?」
「ゆかりん、それが大人になるってことなのよ」
「夢を諦めるのが大人になるってことなの? だったらゆかり、子供のままでいい! 大人になんてならなくていいよ!」
(分かってるもん、ゆかりは大人だから、ミサちゃんの言うこと、分かりたくないけど分かるもん! でも今のゆかりはゆかりんだから、こなみちゃんの味方だよ、大人の事情で、あんなに頑張ってたこなみちゃんの夢を壊して欲しくない!)
「ゆか・・・・り?」
 驚いたような顔でゆかりを見つめるミサちゃん。
(いきなり大きな声を出しちゃったから、びっくりしたのかな。でもでも、これだけはどうしても譲れないんだもん!)
「今、あなた『ゆかり』って・・・・」
「ほえ?」
(いまゆかり、自分のこと「ゆかり」って言った!? 興奮してて、つい「ゆかり」って・・・・あわわ、どうしよう!?)
「ゆっ、ゆかりんって言ったんです! ミサちゃんの聞き間違いです!」
「ミサ・・・・ちゃん?」
「あわわっ」
(駄目じゃん、ゆかりんが「ミサちゃん」なんて呼んじゃ駄目じゃん!)
 パニクったゆかりは、こなみの腕を掴んで走り出した。
「逃げよっ、こなみちゃん!」
「待って!」
 走り出したゆかりたちに、ハイヒールのミサちゃんが追いつけるはずもなく、二人は夕暮れの街を走り抜けた。

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